宵の朔に-主さまの気まぐれ-

風呂に入ってさっぱりした朔が居間に行くと、そこにはすでに柚葉が居て熱心に何かを作っていた。

形から察するにそれは髪飾りで、以前ここに居た時に町で仕入れていた玉を使い、傍には金槌などもあってかなり本格的に見えた。


「柚葉、待たせたかな」


「いいえ。主さま、今から私がする話を最後まで聞いて下さいますか?」


…また嫌な予感がしたが、百鬼たちから相談されることも多い朔は聞き上手でもあり、頷いて柚葉の隣に座った。


「ちゃんと聞く。どうしたの」


「私にお金を貸してほしいんです」


全く想定していなかった内容に朔の目が丸くなると、柚葉は吹き出して作りかけの髪飾りを傍に置いた。


「身請けして下さった時に莫大なお金を主さまが払って下さったのに、さらにお金を貸せなんてひどい話ですよね。でも私が自立するには必要なんです」


「自立って…どうするつもりなんだ?」


「主さま…私がずっとここに居るものと思ってません?」


「え…」


「私はここから出て行きます。そのためにお金が必要なんです。そして身請けして下さったお金はいずれ全額お返ししたいんです」


朔の表情がみるみる悲しげになっていく。

心配してくれている――その優しさは柚葉をふんわりさせて、作りかけの髪飾りを取って朔に見せた。


「着物や髪飾り…巾着や下駄…そういったものを作って商いを始めたいんです。だからお金を…」


「どこに行くつもりなんだ?柚葉…その話はすぐに承服できない。少し時間が欲しい。待ってもらえるか?」


「はい、それはもう。私も材料を仕入れてもっと沢山作らないといけませんから」


――朔が深く息を吐いて指で眉間を押さえた。

柚葉が離れていく――

凶姫と同様に、その事実をなかなか受け入れることができないでいた。