宵の朔に-主さまの気まぐれ-

朔は一体自分に何を試そうとしているのか――

整理すると、自分とどう関われば死に至るのか…朔はそれを聞きたがっていて、恐らくそれを試そうとしているのだろう。

…正直言って口付けひとつでも、朔が死んでしまうのではないかと思っていた。

眠りから覚めるとそのことばかり考えてしまい、朔が無事に戻って来るまで怖くて仕方がなくて、ずっと部屋の隅で布団を被って震えていた。


「…!戻って…来た…?」


庭から話し声が聞こえて部屋を飛び出した凶姫は、居間に着くなり突っ切って縁側から庭に降りて朔に駆け寄った。


「腕は!?足は!?ちゃんとついてる!?」


「全部ちゃんとついてるけど…脱いで見せようか?」


「!結構よ!無事なら…いいのよ」


急にしおしおして胸を撫で下ろしながら背を向けた凶姫の頭をぽんと叩いた朔は、縁側に座って雪男が用意した茶を飲みながら上目遣いに見つめた。


「死んだと思った?」


「…まあ、そんなところよ」


「あれしきじゃ死なないということだろう。まだ話すつもりがないなら次の段階を踏ませてもらうけど」


「駄目よ。絶対に」


「駄目が多い奴だな。話してくれれば何もしない」


傍から見たら完全に痴話喧嘩――しかもその話の内容から察するに、ふたりは浅からずそういった仲になっている…


凶姫と同じく出迎えに現れた柚葉は、その話の内容に衝撃を受けて膝からへなへなと崩れ落ちて居間に座り込んだ。


「そう…やっぱり…そうなるのは当然よね…」


覚悟していたことだった。

自分は美しくないが、凶姫は誰から見ても美しいし、華がある。

自分は取り得は繕い物しかないし、ここにお世話になる義理もない――むしろお返しをしなければならない立場なのだ。


こんな感情抱くことすら間違っている。


「雪男さん」


「ん?どうした柚葉」


「私、ちょっと出かけて来てもいいですか?」


「え?あー、いいけどついて行こうか?」


「いいえ、ひとりで大丈夫ですから」


朔がふたりの会話を耳にして振り返る。

だが柚葉は目を合わせることなく立ち上がって部屋に下がり、また朔に言いようのない不安を抱かせた。