後部座席に乗り込む。
あたしを車にのせてくれたのは、
「家に向かえばいいのよね?」
――玉城さんだった。
愛のうちの、使用人さん。
「……はい。ありがとうございます」
車内は少しタバコの香りがする。
「前に言ったよね。愛に関わるなって」
「はい」
「約束したよね? 愛を無視するって」
正面を見ながら運転している玉城さんと、ときたま後部座席でミラー越しに目が合う。
「だけど破ったのよね」
「……はい」
「話が違うじゃない」
「……すみません……」
車が、あたしのマンションの前に着く。
そういえば家の場所教えてないのにどうして知ってるんだろう。
「愛は、あなたにもう興味なんてないわ」
「……え?」
「忘れなさい」