金魚すくいかぁ……。


「金魚すくい、あたし好きだったなぁ」

「……へぇ」


なんだか愛が穏やかに笑ってる。珍しい。


「そういえばあたしも、小さな頃に一度だけお父さんの会社のお祭り行ったよ」


それは、忘れていたのか、封印していたのかわからない記憶だった。


お父さん、お母さん、そしてあたしの家族3人で過ごした思い出をいつの間にか思い出さないようにしていた。


思い出すと悲しいから。


「あたし上手いよ?」

「知ってる」


――え?


「……なにが?」

「梁ちゃんは金魚すくい得意だもんね」

「なにその妄想」

「妄想じゃないよ」

「……え……?」

「さあ、行こう。なにから食べる?」


愛に手を引かれる。


「え……あ、そうだな。それじゃ、あっちの……」