プラットホームの右側が明るくなる。


ライトを点けた回送電車が、駅で止まらずに走り抜けた。


肩まで伸ばした黒髪が電車の風に煽られて、くしゃくしゃになる。思わず出る溜息。手櫛で髪の毛を整える。次に各駅停車の電車が来るだろう。わたしはそれを待っていた。


子供の頃は、溜息をつきながらたばこを吸う自分を想像していなかった。


たばこを吸うと知ったら、ユウタもびっくりすると思う。

幼馴染で3つ年下のユウタ。


幼くてかわいくて、毎日遊んだものだ。


一人っ子だったわたしは、生意気にもお姉さんを気取り、遊んだあとのおもちゃを片付けなさいと叱ったり、きちんと片付けられると頭を撫でてあげたりしていた。


わたしもユウタも小学校に入ってからも、時々2人で遊んだりしていた。もちろん、わたしがお姉さん風を吹かせていたけど。


ユウタに1つだけ勝てなかったのは競争だった。


脚に羽が生えているかのように軽やかに走るユウタに追いつけたのは、ユウタが小学校に入学する前まで。ユウタが小学校に入学してからは、わたしに叱られて逃げる彼に追いついた記憶はない。