「お前がやったのか」

いろいろと考えを巡らせている間に、強盗が私の部屋のドアを開けていた。全然気づかなかった。

「は?……ああ、もしかして父さんと母さんのこと?私がやったけどそれが何?」

強盗に向かって淡々と答える。強盗の顔が少し強ばる。

この男は見たんだろう、1階で息絶えていた私の両親の姿を。

どうせ世界は終わるんだから、最期に目障りなモノを片付けたくもなるじゃないか。目の前の男だって強盗しにやってきてるのに。
あとついでに、大好きだった弟を私だけの『お人形』にしたっていいじゃないか。

男が1歩踏み出し、私に近づく。私は大好きなお人形を抱えたまま動かない。
男の手には鉈が握られている。これで私を殺し、あらためて金を奪い逃げる予定なのか。
男が鉈を振り上げる、と、同時に感じる浮遊感。

直後、衝撃と激痛が走る。後頭部の着地地点にちょうどコンクリートの破片があったようだ。ぶつかった痛みと破片が刺さる痛みが同時に襲いかかる。
目だけで上を見上げると、強盗の男が窓から私を見下ろしている。と思ったら踵を返した。強盗の本分を果たすつもりか。

どうにか首を曲げて周りを見渡す。人がたくさんいるが私を助けようとするものはいない。
それはそうだ。全員明日になれば死ぬのに、1日ずれて死ぬ人間のことなんて眼中に無い。というかやりたい放題だな、私と同じで。暴れてる人がほとんどだ。どうせ明日になれば死ぬんだから、その前に恨みのある人間のひとりやふたり殺しておきたいのは当然だ。私もそうなんだから。

ん?誰かが私に近づいてくる。さっきとは別の男。息が荒い。なんか服脱ぎ始めてる……そういうことか。好きにしたらいい、どうせもう死ぬから。ああ、せめて私のお人形はちゃんと私のそばに置いといてくれると嬉しいかな。


もしも明日世界が終わるなら?

多分その前に、世界は勝手に終わります。