お昼を食べ終わり、食堂から教室に戻る途中でふとさっきの教室でのことを思い出した。



"莉々奈と2人で食べたい"


中学の頃からさぞかし人気者だっただろう陽太からすれば、本当に何気ない一言に違いない。

だけどそれは私にとって初めてで、特別で、優しくて。

そのときの彼の声が、表情が、鮮明に思い出せる。
今思えば、これまでの私なら誰かと一緒に過ごすことすら未知の世界。

それなのにこんなにもときめいている。
世界が変わって見えている。
こんな気持ちになれるなんて。



鼻歌を歌いながら歩く陽太を一歩後ろから見つめて、私はただ、この幸せを噛み締めていた。