靴を脱ぎ、シンと静まり返る廊下を抜けてリビングの電気を点ける。 誰もいない部屋。 見渡すと、あの時のような明るい家庭の面影は、少しもなかった。 しばらくすると、お母さんとお姉ちゃんが帰ってきた。 二人は笑顔で話している。 「…おかえりなさい」 夕食の準備をしながら声をかけた。 「ああ…帰ってたの」 お姉ちゃんと喋っていたときの笑顔を残さずにお母さんは言う。 「友達の家にでも泊まればいいのに」