「井上さん、かっこ良かった!」
「足、早いんだね」
「お疲れ様ー」
「井上さんのおかげで、2位になれたんだよ」

拍手をしてくれているみんなからの声に、胸が熱くなる。

「あた…し……?」

これは、夢?本当に、あたしに向けられているの…?

「なっ?生きてると色んな事があるだろ?」

佐久田くんがあたしの肩をポンと叩いた瞬間、こぼれ落ちたのは涙だった。

「なんか……ごめんね。」

ひとりの女子の言葉に、あたしは顔をあげた。

「井上さんのこと、勝手に"恐い子"って決めつけて、話したりしなくて。」

「オレらは男だから、余計に話しかけにくかったし…なぁ?」

「なに?責任転嫁⁈」

「ちげーよ!」

「まぁまぁ。夢希ちゃんが優しくていい子なのは、わたしが保証するから!」

クラスの男子と女子の言い争いに、小野さんが割って入る。