15歳、今この瞬間を

大きな声をあげた小野さんは、そのまま派手に転んでしまった。

起き上がってひょこひょこと走り出したものの、どんどん抜かされていく小野さんを見て、リレーのメンバーは「あーあ」と肩を落としていた。

くすくすと笑い出す女子もいた。

「……ッ」


小野さんは、運動オンチだ。

本人も、それを自覚している。

それでも…だから、練習を頑張っていたんだ。

今だって、一生懸命挽回しようとしてる。

だから、そんな小野さんを笑って欲しくなかった。




「お…小野さん!頑張れぇーーーッ‼︎」

あたしは、大声で叫んでいた。

それに気が付いたのは、周りにいる子たちが驚いた顔であたしを見ていたから。

大きな声をだしたのはいつぶりだろうか…全身が熱を帯びているのが、自分でもわかるほどだった。

あたしの声を聞いた小野さんは、前を向くと、しっかりとした足どりであたしの方へと向かってくる。

「小野さん!大丈夫だから!落ち着いて‼︎」

あたしは両手をあげて、小野さんに見えるようにぶんぶんと振ってみせた。