15歳、今この瞬間を

菊谷くんは、一瞬目をクルっと丸くしたあとで、

「ありがとうな。でもロウが聞いたら更に拗ねるだろうな〜」

と言って笑っていた。

「お、お母さんが、前にそう言ってたから…それだけだからね!あたしじゃ、ないから…!」

「あはは。じゃあそういう事にしておくよ」

「……」

"ありがとうな"だなんて否定しないところが、さすがだと思った。

あたしの借り物は、"イケメン"だったんだ。

みんなも納得するようなイケメンっていったら、転校してきたあたしは菊谷くんしか知らなかったし、お母さんもそう言ってたから大丈夫かな、って。

本当にただそれだけ。

でも、あとで内容を知った佐久田くんは、菊谷くんの言った通り拗ねていた。

別に佐久田くんの顔が悪いわけじゃないけど、世間一般的に言う"イケメン"とは違う気がしたから。

それから午前中は、体育委員の仕事をしながら競技を見たりして終わった。

菊谷くんはやっぱり運動もできるみたいで、1年生や2年生の女子も、菊谷くんの身のこなしを見て騒いでいた。

佐久田くんも運動は得意みたいで、小野さんはいつ見ても鈍臭かった。