15歳、今この瞬間を

「夢希、オレじゃだめなの?」

なぜか菊谷くんの隣に座っている佐久田くんが立候補してきて、少し考えてはみたものの、

「…多分、ムリ」

断ることにした。

「えーっ、オレは無理って借り物の内容何なんだよー」

佐久田くんは断られたからか、不満そうに口を尖らせていた。

「じゃあなロウ、ちょっと行ってくるわ。夢希行こうか」

そう言うと菊谷くんは、立ち上がってあたしの方に来た。

ゴールの方を見ると残り時間1分となっていて、既にひとりゴールしているのが見えた。

当たり前だけど、いつまでも借り物を探せるわけではなく、制限時間が設けられている。

「毎年みんな借り物には苦戦してるよ。で、夢希のは何だったの?」

相変わらず、背が高い菊谷くんの声は、頭の上から降ってくるようだった。

「イ……」

「い?」

あたしはそれ以上言えなくて、とりあえずゴールしてから菊谷くんに借り物の内容を書いた紙を見せた。