15歳、今この瞬間を

そして目の前には、あたしに向かって差し出された手。

「佐久田くん…」

「夢希、おまえフラフラだぞ!大丈夫か?よし、一緒に逃げるか!」

そう言うと佐久田くんは、今日の良く晴れた空のような笑顔になった。

「…」

なんでかな……あたしは、その手をとったんだ。

やっぱり佐久田くんの手はあったかくて、あたしを不思議な気持ちにさせる。


「ねえ、見てアレ!」
「ヒュ〜」

周りがはやし立てる中、あたしと佐久田くんは手を繋いで逃げた。

競技が終わっても、みんなニヤニヤヒソヒソあたしと佐久田くんを見ていたけど、別に気にはならなかった。

陰口には慣れているし、ひとりじゃ…なかったから。

「夢希、大丈夫だったか?」

「うん。……あ、ありがと」

正直しんどかったあたしは、佐久田くんに助けられた思いでいっぱいだった。

それに、競技のあとまっすーに呼ばれて注意を受けた時も、あたしに矛先が向かないようにしてくれていた。