15歳、今この瞬間を

夢希という名前は相変わらず嫌いだけど、佐久田くんたちに呼ばれているせいか、小野さんに対してはあまり抵抗感がなかったんだ。

歩きながら振り返ったら、小野さんが女子たちに囲まれていた。

「ちょっと!あの子と話してて大丈夫なの⁈」
「小野さんいじめられたりしてない⁈」

…なんてことを言われているのだろうか。

あたしはヤクザの娘に見えるらしいから(笑)。

「夢希早くー」

ずんずん歩いて行く佐久田くんを、早足で追いかけた。

「……」

菊谷くんは、あたしに合わせてゆっくり歩いてくれたのに。

…ボヤいている場合じゃない、体育委員になってしまったあたしの今日に、暇はない。

体育委員は、ゴールテープを持ったり小道具の準備や片付けなどをしたり、それぞれに担当が割り振られている。

面倒だけど、サボれないのが現実。

「あ!夢希ちゃーん!」

佐久田くんを追いかけていたら、後ろからほわほわした声が聞こえてきた。