15歳、今この瞬間を

「本当にごめんなさい!」

小野さんは、謝りながら手を合わせていた。

「何回謝るの?別に小野さんが悪いわけじゃないんだから…」

「でも、噂を信じたわたしも悪いと思うから!」

小野さんの言葉には、力が入っていた。

「だけど、佐久田くんや菊谷くんと居るときの井上さんって、なんか違う気がして…。井上さん、楽しそうっていうか…笑顔もかわいいし、悪い子に見えなくて。だから、噂はうそなんじゃないかって、わたし思ったの」

「……」

楽しそう?あの2人と一緒にいるあたしが、楽しそう?

あたしは振り回されているだけ、楽しいとは程遠いのだけど…。

「あと、井上さんの親がヤクザだなんて…そんな事ないよね?」

「…まさか」

井上さんは、ホッと胸をなでおろしているようだった。

真面目で仕事大好きのお父さんと、あのほわほわしたお母さんがヤクザだったら笑っちゃう。

それともなにか、あたしがヤクザの娘にでも見えたのか…全く噂ってヤツは。