15歳、今この瞬間を

「い…井上さん!」

2、3分くらい歩いただろうか、聞き覚えのある声があたしの足を止めた。

「良かった…お、追いついた……はぁ…」

わざわざ走ってきたのかな、汗をかいて、息を切らせて…運動オンチの彼女が目の前にいた。

「…小野さん」

「わたしも道こっちなの。一緒に、帰らない?」

「……」

あたしは、ゆっくりと歩きだした。

「あ、待って!」

それに慌ててついて来る小野さん……もう勝手にして。

「あの、わたし……ごめんなさい‼︎」

「え……」

思いもよらない小野さんの言葉に、あたしの足は再び止まっていた。

小野さんから謝られる理由が、全くわからない。

「わたし、色んな噂とかあって……井上さんのこと、勝手に恐い子なんだと思ってたの!」

噂…恐い子……まぁ、だいたい想像つくけど。

「でも違うってわかったから…!体育祭の練習、すごく楽しかったし!」

小野さんの目は、またキラキラとしているように見えた。