15歳、今この瞬間を

「オレなら中に着込んでるから平気。学ランって意外とあったかいし」

そう言いながらスルスルとマフラーをほどいて、あたしの首に巻いてくれた瞬間ーー、

「……」

左頬の上の方に感じた…少し冷たい感触。

「夢希……」


冷たいのにあったかくて…切なくなる。

思わず涙が出そうになるそれはーーロウからのキスだった。

「……」


「…オレには無理だ。ごめん、行こっか」


吐く息が、空気を白く染めていた。

あたしたちは、来た道を急ぐでもなく戻り、電車に乗った。


"オレには無理"って……なんのこと?

さっきのキスに、意味がないなんて思いたくなかった。


"だからオレには、夢も希望も…要らない。夢希に会うまでは、そう思ってた……"

「ロウ」

駅に着いて家までの道を歩く途中、あたしは穏やかに話しかけた。

「ロウの話で…リョウくんの気持ちも、よくわかったの」

「夢希……」

ロウは、申し訳なさそうな顔をあたしに向けた。