15歳、今この瞬間を

「ありさは海やプールは禁止されていたから、憧れが強かったんだろうな。このイルカの水槽が大好きでさ…夢希みたいに、いつかイルカと海で泳ぎたいって、よく言ってたんだ」

入院生活が続いて、その気持ちが余計に大きくなっていったというありさちゃん。

そして7月のーーありさちゃんが亡くなった日、前から計画していた通りに病院を抜け出し、ここ名古屋港水族館へ向かった。

「オレはバカでさ、てっきりありさは大丈夫なんだと……元気になっているんだと思っていたんだ。バカだよな…ありさは多分、わかってたんだーー」

自分の最期をーーー。

「それなのにオレは、嬉しさが先行して何も見えていなかった…。この水槽の前で…ありさは……!倒れたありさやオレのおかしな様子に気付いた周りの人が、救急車を呼んでくれたりして……でも、ありさは…そのまま……っ」

「……」

ロウは、泣いていた。

泣いていることを否定するように、それはとても静かだった。

「それからは、過ぎていく時間に合わせて、オレは寝たり起きたりを繰り返すしかできなかった……」