15歳、今この瞬間を

「ありがとう」

お礼を言ってからスマホを受け取り、今度は確実に上着のポケットに入れた。

「じゃ、じゃあ…」

「あ、オレももう帰るから、そこまで一緒に行こ?」

「え」

思わぬ展開に戸惑うあたしのことなんかお構いなしのロウは、あたしに向かっていつもの笑顔をして見せた。


「忘れるなよ、ロウ」

そこへ、突き刺さるようなリョウくんの声が、あたしのすぐ隣にいるロウめがけて飛んできた。

こんなに冷たい声を出すなんてーーあたしまで、ピリピリとする。

「……」

見上げたロウは振り向きもせず、それに対して右手をあげただけだった。

"了解"ってこと?忘れるなって、なんのことだろう。

「夢希、気をつけて帰れよ」

「う、うん」

不安なドキドキ感に包まれながら振り返ると、リョウくんはいつもの爽やかな笑顔をしていた。

そんなリョウくんを見ていると、どこからあんなに冷たい声が出るのだろうと思ってしまう。