15歳、今この瞬間を

全身で受けている風が、季節に反して心地よかった。

「あら、夢希ちゃんだったかしら、もう帰るの?」

声をかけてきたのは、買い物帰りだろうか、スーパーの袋を持ったリョウくんのおばあちゃんだった。

何回か顔を合わせるうちに、あたしとありさちゃんを見間違えなくなった。

「あ、はい。さようなら…」

「気をつけてね、さようなら」

リョウくんのおばあちゃんは、笑顔で隣のドアから家の中に入っていった。


ようやく寒さを感じるようになったあたしは、上着を着て歩きだした。

「……」

リョウくんは、帰るあたしを引きとめたりしない。

付き合っている相手となら、ずっと一緒にいたいとか思わないのかな…?

早々と帰るあたしもあたしだけど。

ブレスレットは、外したことの理由を考えておいて良かったーーもう、つけることはないと思う。

リョウくんに対して生まれた不信感が、拭えないあたしだから。

そして今日みたいな曇り空でも、見上げれば浮かんでくる、朗らかな空のような笑顔ーー。