15歳、今この瞬間を

「…えっ」

突然名前を呼ばれて我にかえると、目の前には佐久田くんの顔があった。

「どうした?」

「ううん、何でもない……」

なんでもない……

「さっきの……気にすんなよな。夢希には関係ないからさ」


……訳ない。

苦笑いなんか、しないでよ。

「あたしって、そんなにありさちゃんに似てる…?」

「…」

もうすぐ閉会式が始まるのだろう…いつの間にか人気(ひとけ)はなくなり、あたしの声は開け放たれた窓から入ってくる風に溶けて、どこまでも流れていくようだった。

「夢希、」

"夢希には関係ない"ってなに?

運命共同体とかなんとか勝手なこと言っておいて、ちっとも共同体じゃないじゃん。

そうやってまた首の後ろを触ってさ、ごまかしたい時のポーズみたいにしか見えないし。

あたしは、ありさちゃんの代わり……?