15歳、今この瞬間を

「あ…ごめん」

驚かせてしまったと思い、すぐにその手を引っ込めたあたしだったけど、

「いや、オレの方こそ…なんか、集中しすぎてたわ」

「…」

と言われ、引き込まれていたのがあたしだけじゃないとわかって、少し安心したのだった。


「キレイだな…」

佐久田くんが、ぽつりと言った。

「ね……」

それは、教室中に広がる、青い海の世界を描いた絵だった。

あたしたちはその海で泳ぐイルカを、少しの間無言で見つめていた。

「あたし、イルカと泳ぎたくて…」

「え……」

気が付けばあたしは、誰にも話したことのない想いを口にしていた。

それは、相手が佐久田くんだったからか、教室にあたしたち2人しかいなかったからなのか……。

「小さな頃に行った水族館で、初めてイルカを見た時から夢なの…」

ひとり言みたいに小さく言ったあと、急にあたしの視界が暗くなっていった。