15歳、今この瞬間を

「夢希それホントか?大丈夫か?」

あたしのことを心配するリョウくんの表情は、さっきとは違って穏やかだった。

「う、うん。もう大丈夫だから…」

とっさにウソをついたことに罪悪感を覚えながらも、トイレに行ったのは本当のことだし、なんて正当化しているあたしがいた。

「リョウくんたちは、もう見てまわったの?」

「ああ、もう見たよ。俺たちはここで作品解説とかしなきゃいけないから、3年生の分だけを見ればいいんだ。1人ずつまわってもすぐに終わるよ」

「へぇ、そうなんだ」

と、返事をしたものの、話題を変えたかっただけのあたしには、そんなことはどうでも良かった。

「じゃあ…残り見てくるから。行くぞ夢希」

「あっ、もうっ!待ってよ!」

たいして会話もしないまま、佐久田くんは軽く右手をあげながら教室を出ようとしていた。

あたしは今日、佐久田くんを追いかけてばっかりだ。

「なぁ夢希」

廊下を歩きながら、佐久田くんはあたしをちらりと見て言った。