15歳、今この瞬間を

「よくわかんねーけど、付き合ってやるよ」

少し困ったような佐久田くんの声が聞こえてきてから、あたしはポンポンと肩を叩かれた。

その手で少しだけ、佐久田くんの方に引き寄せられたあたしは言い聞かせた。

胸の奥の方にあるこの気持ちに、気付いてはいけないとーー。


「あ…ありがと」

少しの間、佐久田くんの胸を借りていたあたしは、涙が止まると無性に恥ずかしくなって、目を見て話せなかった。

「じゃあ次行くか?」

そうだった、まだ3年生の作品を見ていなかった。

「うん」

あたしは短く返事をしてから、ゆっくりと立ち上がった。

「オレさ、」

残り3段まで降りた階段をピョンと飛び降りた佐久田くんは、振り向いて言葉を続けた。

「夢希が戻って良かったと思ってる」

「…?戻った?何が…?」

あたしには、佐久田くんの言っていることの意味がわからなかった。

「いいんだ」

それなのに、佐久田くんの笑顔は嬉しそうに見えた。