「もっと自分に正直になっていいと思う」

「…!」

はっとしたような顔をした夢希の瞳は涙をためていて、それが流れ落ちるのに多くの時間を必要とはしなかった。



「楽しかったね、リョウくん」

「あぁ、また来ような」

コアラを見た後、順番にキリンなんかを見て回ってから、夢希の見たがっていた(イケメンゴリラと話題らしい)シャバーニを見て、それからカメなんかも見た。

帰る頃にはクタクタで、夢希は電車の中でウトウトとしていた。

「……」

電車に揺られながら小さく息を吐いた俺は、斜め下にいる夢希を静かに見ていた。

俺がこれまで夢希に言ってきた言葉は、全部ロウの受け売りだ。

でも結果、それがいつも夢希の心を掴んでいる。

やっぱりロウの洞察力は鋭く、これだけは敵わないと今でも思う。

「夢希、起きて?」

最寄り駅に着き、俺は優しく夢希を起こした。