「で、なんで韓国なわけ?」


石田先生がブスッと尋ねてくる。


どうやら天国の食べ物に不服があるようだ。


早く天国名物をご馳走したいところ。あまりの美味しさに、きっと先生のご機嫌も直るはず__って、なんでご機嫌伺いを立てるのか?まだ見習いも見習いだ。


でもそれには、ちゃんとした理由がある。


先生は生まれてこの方、ウソをついたことがない。


大天使になれる素質が備わって__。


「そもそも韓国人てキムチ臭くない?カラムーチョみたいな匂いがする」


鼻を摘んで顔をしかめる、石田先生。


あまりの正直な物言いに、その素質を疑ってしまいたくなるのも仕方ない。


「天国は全世界共通ですから。今回の任務は、韓国人
のパクさんです。パクさんはプロポーズ直前に心臓発作で亡くなりました。でもまだこの世に未練があって彷徨っているんです。だから僕たちが天国に導く、それが天使の仕事なんです」


「時給いくら?」


「時給?」


「最低賃金は貰わないと困るよ。950円で手を打とうか」


「交通費込み、組合費天引き、税金も引きます。あと休む時は必ず代わりの天使を見つけて下さい。風邪で休む時は日給も引きます。体調不良は自己管理力の欠如ですから」


「川村くん、ひょっとして天国ってブラックなの?」


「ホワイトですけど?」


「夜中の1人営業とかある?」


「あ、ちなみに先生はまだ研修中ですから時給は発生しませんから」


「黒い。半蔵より黒い」