すっきり顔のオサーン。


慟哭もなければ、嗚咽もない。いともあっさりと現実を受け止めている。


「なに?なんか不満そうだけど?」


「いや、もうちょっとこう__」


「それともなに?川村くん的に、僕がショックを受けて立ち直れないほうが良かった?でも僕は、そういう構ってちゃんな感じ、嫌いなんだよね」


「そう、ですか」


僕はやっぱりまだまだ未熟なのだろう。


これまでに出会ったことがないタイプ。でもふと思った。


だからウソをついたことがないのかもしれない、と。


「えーと、名前は__」


手元の資料には「石田」とある。


すると石田はにっこり微笑んでこう言った。


「石田先生でいいよ」


しゃーないなー、という感じ。


「いいよ」てへりくだっての「先生」は無くないか?


「そう呼ばれてたからさ。イッシーでもいいけど」


「じゃ、あの、石田先生。これから僕と一緒に天国に行ってもらいます。しばらくはこの僕が、教育係として天使とはなんたるかを教え、一人前の天使に__」


「サイゼで打ち合わせしない?」


「いや、天国には無いかな?」


「え⁉︎サイゼないのー?じゃ無理無理。帰るよ」


「帰れないんですけど?」


「川村くん、サイゼなめてない?あのコスパ最強だよ?グラスワインであの値段はないし。サイゼ飲みとかしたことない?」


「お酒は飲まないので」


「じゃ、いいよスタバで。2人でマキアートきめて、大事な会議に備えてるんです感、出す?」


「あのごめんなさい、スタバもないですね」


「ダーコメはあるよね?モーニングとか必須だよ?」