「えーと、次は四国の徳島に行きます。安西玲子さんという女性ですね。安西さんはまだ亡くなってないんですけど、このままなら確実に地獄に行ってしまうので、それを未然に防ぐのも僕ら天使の__って、石田先生、聞いてます?」


僕は、なにやら上の空の先生に尋ねた。


「聞いてるよ。聞いてるけどさぁ」


なにやら納得いかないご様子。


「なんですか?まだ死因が腑に落ちないと?」


「そりゃそうだよ。ただコケたって。でもあれでしょ?なんか凄い険しい道とかでしょ?あ、分かった。今まで誰も行ったことのない奥地に探検した勇者的なやつ?いばらの山道で、さすがの僕も力尽きた系?」


上目遣いに縋ってくるが、ここは心を鬼にしないと。


天使が鬼になるのだ。


「でも僕の功績が後に認められて、歴史に名を__」


「平坦な道です」


「えっ?」


「なに1つ障害物のない平坦な道でコケて亡くなりました」


「平坦な言い方やめてくれるかな?」


「いや、感情を込めちゃうと笑ってしまいそうで」


「君‼︎それでも天使なのー⁉︎」


「だって、初めてなんで。なに1つ障害物のない平坦な道でコケて亡くなったのは」


「だから何回も言わなくていいよ‼︎」


「レア中のレアですよね。なに1つ障害物のない平坦な道でコケて亡くなったとか」


「なに1つ障害物のない平坦な道でコケて亡くなるなんて、そんなヤツ、この世に居るの?」


「あの世には居ますけど」


「なかなかうまいこと言うね」


そんな僕らの掛け合いは、女性の叫び声に引き裂かれた。