話題が話題なだけに、だんだんと聞いていられなくなって、その場をササっと離れる私。
あの調子だとしばらく話しているかもしれないから、先に下駄箱に行って待っていようと思い、教室を出た。
それにしても、噂って一日で一気に広まってしまうものなんだな。
こんなにいろんな人に話題にされるとは思ってなかったけど、実際は本当に付き合ってるわけじゃないから、もっともらしくウソをつくっていうのもまた難しい。
まだりっくんのことを彼氏だって公言するのは、ちょっと恥ずかしかったりする自分がいて……。
そのうち慣れてくるのかな。
なんて、考え事をしながら歩いていたら、ふと廊下の向こう側から数人の派手な女子たちがぞろぞろとこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
上履きの色を見ると、赤だから一個上の三年生だ。
彼女たちは私の姿を見つけるなり、なぜか立ち止まって行く手を阻む。
そして中心に立っていたウェーブの茶髪の先輩が、睨みをきかせながらこう聞いてきた。
「ねぇアンタ、姫川柚月だよね?」



