その日の放課後。
支度を終えて帰ろうと思い教室を出たら、りっくんがちょうど一年生の女の子に呼び出されている場面に遭遇してしまった。
「あ、あの、桜井先輩っ！ ちょっとお話が……」
なんて、頬を赤らめながら肩を震わせるその子はとても一生懸命な感じで、可愛らしい。
私はいつもどおりりっくんと一緒に帰るつもりではあったけど、その様子を見たらなんだか邪魔しないほうがいいかなと思えてきて、ささっと逃げるようにその横を通り過ぎ、下駄箱まで急いだ。
さっきの、もしかして告白かな？
あの子はりっくんに彼女がいるという噂を知っているのかどうだか知らないけれど、あんなふうに呼び出すのはすごく勇気がいるだろうなって思う。
自分も初めて告白したときはそうだったし。
それなのに、あの子もまた彼に振られてしまうのかと思うと、申し訳ない気持ちになる。
本当はりっくんに彼女なんていないし、私はただの偽の彼女なのにな……。
