頭の中が真っ白になって、うまく言葉が出てこない。
するとそこで突然、浅井くんの隣に座っていたりっくんが一言。
「いや、さすがにそこまでは覚えてないんじゃね?」
場の沈黙を切り裂くかのように、会話に口をはさんできた。
「なぁ?ゆず」
まるで、戸惑う私に助け舟でも出すかのように。
「え……あ、うん」
よかった。どうしようかと思った。
っていうかりっくん、今の話聞いてたんだ。
「あ、あははっ、そっか。そうだよなー。ごめんごめん、急に変なこと聞いて」
浅井くんもりっくんに言われて、すぐに納得した様子で謝ってくる。
「それよりさ、俺のリクエストも聞いてくんない?俺は個人的にここ行きたいんだけど」
りっくんはさらに話題をすり替えるようにして、ガイドブックを指差しながらみんなに向かって話し始める。
こういう場で彼がこんなふうに提案をしたりするのは珍しいので、私も正直びっくりしたけれど、玲二くんはもっと驚いた顔をしていた。
すかさず大声で突っ込みを入れる。



