「で、そこそこモテる辻クンは、今回なんて返事をしたって?」

「まあ……『ごめん』って」

「う~わ~やっぱりかよっ」



そんなふうに言いながらも、俺の話を聞く周りの奴らの表情はどこか楽しげだ。

……そりゃそうか。しょせん他人事だしな。


自棄になってそう考える俺の斜め前から、今度はまた別の奴が笑いながら口を開いた。



「でも辻って、こういう話題でイジり甲斐がないっつーか。恋愛にジタバタする辻とか見てみたいよな」

「………」

「ははっ、そりゃないんじゃね?」

「辻ってアレだろ、女に尽くさせるタイプだろ」

「あー、わかるわかる」



用もなくポケットから出したスマホを弄り、人をネタに好き勝手言っている奴らは無言でスルー。

しかし実際内心では、かなりいたたまれない状況だ。

何せ、周りが俺に抱いているらしいイメージとは正反対に、今現在まさに恋愛でジタバタしている最中だから。

こういうとき、捕手というポジションで培ってきたポーカーフェイスがかなり役立ったりする。

……まあ俺だって、今までは恋愛にジタバタする自分なんて想像もできなかったけど。つーかジタバタする気すらなかったし。