「辻くんも、すごい濡れちゃってるよ。ほら、肩のとことか──」



思いがけなく、こちらに伸びてきた小さな手。

びくりと、体が強ばる。



「ッやめ……っ」

「あ、……ご、ごめんなさい」



驚きのあまり、俺は反射的に彼女の手を振り払ってしまった。

蓮見がパッと素早く手を引く。動揺した様子で謝りながら、顔をうつむけた。

一瞬にして脳内を駆け巡ったのは、罪悪感だ。けれどその拍子に、彼女の濡れてまとまった髪の間から白いうなじや、少し赤く色づいた耳が見え隠れして。


──ドクン。



「(あ。やば、い)」



頭のどこかで、警報が鳴った。