ずぶ濡れの蓮見はいつもよりもさらに小さく、頼りない存在に思えて。

誰にも渡したくない。……自分のものにしたい。

そんな狂気にも似た感情を隠すように、頭に載せたタオルでわざと彼女の髪をぐしゃぐしゃにかき回す。



「わわっ、や、やめ」

「ふは、ぐしゃぐしゃだな」

「ひ、ひどいよ辻くんっ」

「やさしくしたつもりなんだけど」



会話をしながらも手は休めず、乱暴に彼女の濡れた髪の毛を拭き続けた。

非力な抵抗を見せる蓮見だったが、あまりにも違う体格と力の差で、俺にされるがままだ。

しかしようやく、俺が少し気を緩めた隙に、片手を掴むことに成功した。



「お」

「も、もういいから、やめてくださいっ」

「ハ、頭すげぇことに──……」



笑い混じりの言葉の途中、タオルから逃れて顔を上げた蓮見と目が合う。

ドク、とまた一際大きく、俺の心臓がはねた瞬間。ちまちまと手ぐしで髪を整えていた彼女が、何かに気づいたように目を瞬かせた。