「や……そんないいよ、汚しちゃうし」

「いーってそんなん、他にもあるんだから」

「でも」



蓮見の言葉を遮るように、頭の上の雨で湿った学ランを取り上げる。

それから手の中のタオルも奪って、乾いたそれを多少わざと雑に再び頭へと被せてやった。



「わ、」

「……俺が、貸したいって言ってんだよ。だからそれでいーだろ」



俺がそう言ったとたん、ぴたりと蓮見がおとなしくなる。

彼女からは、見えない。見えてないはずだ、今の俺の顔。

……見られたくない。もしかしたら、赤くなってるかもしれないから。


ぶっきらぼうな俺の言葉を聞いた蓮見は、そろそろと両手を持ち上げて。

そして顔はうつむいたまま、ぎゅっと、自分の頭に被せられた白いタオルを握りしめた。



「あ、ありがとう……ございます……」



その仕草に。セリフに。グッと、息が詰まる。

……とっくに知ってた。知ってたけど。

ああ、もう。かわいいな、コイツ。