「(なんつーか、蓮見って……)」



純粋というか、健気というか、素直というか。

それが蓮見のいいところだとは思うけど、なんだかむしろ心配にさえなってくる。

俺の照れた顔を見て「変」と言ったときのことがいい例で。きっと蓮見には、建て前とか処世術とか、そういうものを上手く使って小賢しく生きていくなんてことできないんだろうな。


──とまあ、それはまた置いておいて。



「辻、はよーっす」

「あー、はよ」

「……? なんか辻、機嫌イイね」

「ああ……まあ、な」



挨拶をしてきたクラスメイトに返事をしながら、緩んでしまっていた口元を片手でさりげなく隠した。

おそらく今の蓮見は、少なからず俺のことを意識している。

それがどんな感情にしろ、きっと俺は彼女にとって、もうただのクラスメイトじゃない。

まったく関心を持たれていなかった今までと比べたら、大きな進歩だ。ここで焦って行動を起こして、下手を打つ訳にはいかないだろう。

……急ぐことなんてない。状況は動いている。

今はまだそれだけで、十分だ。