「(昨日の辻くん、なんだか元気がなくて……それを見たら、なんか、胸のあたりがぎゅっとなって、)」



見てられなかった。どうすれば元気になってくれるんだろうって、自分の無力さに悲しくなった。

以前偶然に知ってしまったあのきらきらした表情を、グラウンドで見せていてほしかった。

……なんだろう、この感情。

こんなの、まるで──……。



「ッ、わ」



考えこんでいた私をびゅうっと少し強い風が吹きつけて、髪を乱した。

風の影響で、砂埃が舞い上がる。



「いたっ」



突然右目を刺した痛みに、思わず声を上げて立ち止まった。

どうやら今の強風で目に砂が入ってしまったらしく、勝手に涙が滲んでくる。



「……う……」



ぽた、と雫がひとつ、乾いた地面に落ちた。

私はそれが、目に異物が入ったことによる生理的な涙ではないことをわかっていて。それでも、気づかないフリをする。


ぐちゃぐちゃだ。頭の中も、胸の中も。

一瞬浮かんでしまった“仮定”に、自分で自分に幻滅した。浅ましい、都合のいい自分に。

私は、金子くんがすき。すきなのだ。

他の人が入る隙間なんてない。だってまだ、彼のことを考えるだけで、こんなにも胸が痛い。

……痛い、のに──……。