絡んだ視線の先にあるのは、今の自分と同じように見開かれた瞳。



「……蓮見?」

「辻、くん」



なんで、辻くんが、ここに。

だって彼は、今ごろ部活中のはずじゃ。

だけど今まさに窓際の机に浅く腰かけ、さっきまで窓の外に視線を向けていた辻くんが着ているのは、野球用のユニフォームではなく──見慣れた白いワイシャツと、黒のスラックス。

このあいだのように、どう考えても部活の休憩中、というふうにも見えない。



「……ッえ、と」



彼の黒い目が、ドアの前で立ち尽くす私を見つめているのがわかる。対照的に、私の視線は教室内に並んだ机のあたりをさまよっていた。

どうしよう。どうしよう。

心の準備も、何もない。まさかこんな不意打ちで、辻くんと会うなんて。

ここまでたどり着く間にぐるぐると頭の中で思考していたことを思い出して、うまく呼吸が、できない。



「……蓮見、まだ帰ってなかったのか」



若干混乱気味な私の耳に、普段より重く感じる教室の空気をつたって低い声が届く。

この場で先に疑問を口にしたのは、辻くんの方だった。

私はとりあえず落ちつくため、辻くんには聞こえない大きさで深く呼吸をする。

そうして無理やり平常心を奮い立たせると、渇いたのどからなんとか声をしぼり出した。