何やってるんだろう、俺。

わかってた事実を改めて突きつけられただけでここまで集中力切らすなんて、情けねぇだろ。



「なー、東」

「ハイ?」



だから俺は、少しでもこのモヤモヤ感が晴れればと……なんとなく、隣の後輩に訊いてみることにしたのだ。



「参考までに、他にすきな男がいる奴を振り向かせるにはどうすればいいと思う?」

「え、とりあえず押し倒せばいいんじゃないですか」

「どんなとりあえずだ」



言った本人はめちゃくちゃ真顔で、そのあまりのぶっ飛びさに思わずつっこむ。

そういやこいつ、女関係でいい噂聞かないな。今はまだ部活があるから時間的にもそこまで余裕ないだろうけど、引退後のことを思うと……末恐ろしい奴。



「つーかヒロ先輩、まさか女関係のことで悩んで、」

「おーい辻ーっ!」



東の言葉をさえぎって聞こえた自分を呼ぶ声に首を巡らす、と。

ベンチ脇で休憩していた部員のひとりが、挙げた右手をぶんぶんと振ってこちらにアピールしていた。



「辻~監督が呼んでっぞ~!」

「おー、わかった!」



東との会話は切り上げ、監督がいるベンチへと駆け足で向かう。もたもたなんてしていれば、すぐにでもだみ声の怒号が飛んで来るからだ。



「お、来たか」



監督は、主将の塚田と何やら話し込んでいた。それでもそばにたどり着いた俺に気づくと、声を漏らす。