切なげに眉尻を下げ、ぼんやりといった様子で、廊下の角から金子と中井を見つめる蓮見。

俺としては、本当はさっさとあのふたりの横を通過して部活に行きたいんだけど。こんな蓮見を見つけてしまった今、どうもそれははばかれる。

自分のことを『ひどい奴だ』と断言し、そしてそんな性格を今さら変えるつもりはないものの……ひどい奴なりに、すきになった女子くらいにはやさしくしたいと思うから。


とはいえ、いつまでもここを動けず足踏み状態を続けるわけにはいかない。

どうしたものかと、またため息を漏らしかけたそのとき。廊下の向こうから、顔くらいは知っている同じ学年の男子生徒がやって来るのが見えた。

その男子生徒は、談笑する金子と中井の存在に気づいたらしい。片手を挙げながらふたりへと近づく。



「あ~充と中井さん、こんなとこでラブラブしてんなよー」

「おーケンちゃん、今帰るとこ?」

「おーよ。俺はひとりさみしくチャリで帰りますとも」

「あはは、誰もそこまで言ってないだろ」



廊下の窓の方を向いて立ち止まった『ケンちゃん』のおかげで、少しだけ壁ができた。

よし、これはチャンスだ。思ったのと同時に、行動を起こした。

棒立ちになっている蓮見の右手首を掴むと、そのまま手を引いて歩き出す。

金子は横をすり抜ける俺たちふたりを気にもとめず、『ケンちゃん』との会話を続けていた。すれ違ってから数メートル進んだところで、細く息を吐く。