「ははっ、何言ってんだよ~」

「ッ!?」



前方から聞こえてきた声に、ビクッと体が反応した。

見ると、ロードワーク中なのか、駆け足でだんだんこちらに近づいてくる男子の集団。……あれって、男子バスケ部、だ。

そしてその中には、先ほど自分の耳に届いた声の主──いつも自然と五感が探していた、金子くんの姿があった。

未だに、私の目や耳は彼を見つけ出すことに長けているらしい。ズキンと、胸が痛む。


このまま校門へ向かうと、嫌でもバスケ部の集団とすれ違うことになってしまう。

私は金子くんの姿を見つけたとほぼ同時に、とっさに踵を返していて。いつも通るのとは違うルートへと、足を向けた。

今までもこれから先も、自分には決して向けられることのないあの声や笑顔に……これ以上、耐えられないと思ったから。



「……何やってんだろ、私……」



普段めったに通ることのないプール脇の道を歩きながら、ぽつりとつぶやく。

これじゃあ、ただ逃げてるだけだって。そんなことは、自分でもわかっているのに。