「つーか、よく知ってたな。付き合ったの先週の金曜なのに」

「だって俺、おまえが告白した場面見てたし」



正直に答えてやると、色ボケした金子の緩んだ表情がギシッと固まる。



「げ……マジ?」

「マジマジ」

「……最悪……」



つまり後半の熱烈ハグシーンも目撃した、というニュアンスを含めつつうなずけば、金子はこの世の終わりだとばかりに両手で顔を覆った。

そんな落ち込むくらいなら、あんなわかりやすいところで告ってんのが悪い。あまつさえその場で抱き合ってるし。



「まあ、中庭で告んのがダメとは言わねーよ。オーケーもらってソッコー手ぇ出すのも別に悪くないと思う」

「……辻って、実は結構ヤな奴だよなー」

「あー? 俺は金子のこと、もうちょっとストイックな奴だと思ってたけど」



実はわりと本能に忠実?と言外にからかうつもりで、口の端を上げた。金子がますます頭を抱える。



「ほんと俺、なんで辻に見られちゃったんだろ……よりによって、なんで辻に……」

「シツレーな奴だな。むしろ、見られた相手が口の堅い俺でラッキーだったと思え」

「こうやってネタにされてからかわれてる時点で、ラッキーとは思えないっつの!」



ヒートアップして詰め寄ってきた金子を、どうどうと両手のひらを向けてなだめる。

まあたしかに。俺だって逆の立場なら、自分の告白現場を目撃されるなんて相手が誰だとしても勘弁だ。残念すぎる金子。

そんな致命的なヘマ、俺はしたこともないし今後もするつもりはない。