「ん~まあ、特別『変わったなぁ』っていうようなところはないと思うけど……今と同じで、硬派で野球部で頭が良かったかな」



多少引っかかりはあっただろうに、少し考えてから沙頼は律儀にそう答えてくれた。

うぅ、このやさしさがありがたい。心を落ちつかせるように口内でレモンキャンディを転がし、できるかぎり平静を装ってうなずいた。



「そっ、か……」

「へー、さよちぃと辻っちって同中だったんだ~。知らなかった!」

「同じクラスになったのは3年のときだけだったけどね。ていうか佳柄、前から思ってたんだけど、その呼び名よく辻くん許したね……」

「もう半分諦めたんだってさ! あはは!」

「果たしてそこは笑うところなの……?」



コントみたいなふたりのやり取りを聞きながら、私は考える。

今と変わらず硬派、ということは私が勝手に分析していたように、女子と積極的に話すようなタイプではなくて。

じゃあやっぱり、冗談でああいうことを言う人ではない、ってこと?

『俺のことすきになれば』って。『本気だから』って。……つまり自惚れじゃないなら、辻くんは私のことを……と、いう意味で……?



「ん~? はすみん、顔赤くない?」

「え」



ついついうつむきがちに考え込んでしまっていたら、ひょいっと佳柄に顔を覗き込まれた。

私は両手で頬を押さえながら、慌てて笑顔を取り繕う。



「あ、あはは、なんか今日暑くて」

「お? はすみん大丈夫?」

「もう5月も終わりだもんねぇ」



私もう寝るとき半袖だよー、なんて会話を続ける沙頼と佳柄に、人知れずほっと息を吐く。

よ、よかった怪しまれなくて。このふたり、どこか抜けてるところがあるからなあ……って、それ実は私も、不本意ながらよく言われる言葉なんだけど。