「や、なんでと言われましても……」

「ああ、意識してんの? こないだ俺が言ったことに対して」

「うっ」



本当にことごとく辻くんは、ストレートでいちいち核心をつく。

絶対、今の私の顔は真っ赤に違いない。

言葉を詰まらせた私を見下ろしながら、彼はおかしそうに笑った。



「ほんと、蓮見って素直だよな。良くも悪くも」

「……よく言われます」

「まあいいや。警戒されてるくらいが、ちょうどいいし」



思いがけない発言に、またぽかんと立ち尽くしてしまう。

そんな私の様子を見て、辻くんは再び口の端を上げると。教室に戻るつもりなのか、背を向けるギリギリまで私に視線を寄越しながら踵を返し、あっさりこの場を去って行った。



「……うぅ……」



辻くんの後ろ姿が遠のいたところで、セーラー服の胸元をぎゅっと握りしめながら思わず情けない声を漏らす。

ついさっきまで私を捉えていた、黒い瞳。あの深い色をした目に見つめられると、なぜだかうまく、呼吸や身動きがとれなくなるような気がする。

掴まれた手首には、まだ少しだけ、辻くんの体温が残っていて。

なんだか、本格的に訳わかんないことになってきてる、ような……。