《……ふーん》



受話器から届いた悠介の声音は、そんな俺を責めても肯定してもいなかった。



《俺さー、正直ヒロは本気になった相手にも、もう少し鬼畜になれると思ってたけど》

「はあ?」

《意外とヒロ、なんだかんだ言って、ちゃんと蓮見さんのこと考えてあげてるんだ?》



無言を返す俺に、さらに続ける。



《大丈夫でしょ、ヒロなら。なんてったって、俺と琴里の愛のキューピッドだし?》



わざとおどけたようにそう言われて、ふっと俺の体から余計な力が抜ける。

……認めたくない、けど。きっと俺は、野球の面でもそれ以外でも、なんだかんだで、このおちゃらけた悠介の性格に助けられてるのかもしれない。

思っても、絶対口にはしねぇけど。

そんなことを考えて、無意識に口元が緩んだ。それを感づかれないよう、俺はまたわざと悪態をつく。



「その言い方、すっげぇ嫌なんだけど」

《まーたしかに……ぶふっ、ひ、ヒロがキューピッド……っ》

「肩震わせてまで笑ってんじゃねぇよアホ」



うん。ムカつくから、ぜってぇ一生言わないでおこう。