「やめろよな、ほんと……よりによって保健室とか……」

《願ってもないシチュエーションっしょ? いいじゃん、狼になっちまえばよかっただろ》



後半のセリフは、つい小声にしてしまった。ため息混じりで話す俺に、悠介は相変わらずあっけらかんと返す。

俺は持っていたペットボトルをベッドの上に放り出して、ますます頭を抱えた。



「狼っておま、身も蓋もない……」

《いやー、まあ事実だし?》

「……だめなんだよ、蓮見は。……あいつのこと、そんなふうに扱いたくない」

《へぇー?》



興味深げに相づちを打ち、悠介が次の言葉を促す。

俺は昼間の彼女を思い出しながら、くしゃりと、自分の髪を掴んだ。



「……たぶんアイツ、俺のこと拒否しきれない。……そんなハンパな関係のまま手ぇ出すなんて、俺だって嫌だ」



きっと俺は蓮見にとって、すごく中途半端な存在なのだろう。

絶対の存在じゃない、けど、ないがしろにもできない。

……わかっててそこにつけこんでいる自分は、とりあえず最低なんだろうけど。