【短】コンソメスープが重たくて



「でも、あなたのことはよく知りません。カウンター越しに話すあなたしか、わたしはわからない」

「じゃあ……」



 彼は俯いてしまった。


 カフェ・ルミエールは終わる。
 でも、彼にはもっと料理を楽しんでほしいと瑠美は思う。



「でも、あなたに料理を作りたい。好きな人のために、作りたい」

「え?」

「あなたをもっと好きになりたいから」



 たくさんの人に喜んでもらえる料理から、たった一人の彼のために作る料理へ。


 店員と常連客の関係を終えて、カフェ・ルミエールの灯りは今日、消える。


 この先、恋人となれるように。
 料理の力を借りて、彼を知っていきたいと瑠美は思った。



「教えてください。あなたのこと」

「僕も知りたいです。瑠美さんのこと」



 手料理は彼のために、幸せな時間は彼と一緒に――――。


 END