あぁ、なんなのさぁ～、その笑顔……可愛すぎる――！

確かに沙耶はモテる。だから結婚しないとは言いつつも、早々に結婚するんだろうとは思っていた。友達だし、祝福したい気持ちはあるにはあるが実際は複雑だった。ひねくれるつもりもなかったけれど、思わず出かかった“いいよね、結婚できて”という言葉を呑み込んだ。

こんな私でも、つい先日まで一応結婚を視野に三年ほど同棲していた彼氏がいた。学生時代からの付き合いだったけど、この男がまた最悪だったのだ。

「里美、この際元カレとより戻しちゃえば？　これから人肌恋しくなる季節だし……」

「絶対ヤダ」

ぶんぶんと首を振ると、沙耶は「だよね」と言って肩を落とした。

せっかくの提案でも、私には即答して拒否する理由があった。