「コーヒーの淹れ方意外にも、お前に教えたいことが山ほどある」

「教えたいこと……?」

ちらりと石堂さん横目で見上げた瞬間、彼が腰をかがめて私の耳元でそっと囁いた。

「俺がお前を、どんなに愛しているかってこと」

「ッ――!?」

耳朶に甘い息が触れて、ゾワッとした感覚が背筋をなぞった。

「わ、私だって、石堂さんこと、どんなに好きか、わかってもらいますよ?」

「あぁ、望むところだな」

そう言うと、石堂さんは口の端をクッとあげて不敵に笑った。

「俺たちの時間はたっぷりあるんだ。まずは、俺の最高のコーヒーを、お前だけに淹れてやるよ」

「はい!」

同じ職場ではなくなってしまったけれど、私たちはいつも一緒だ。そう無言で伝えるように、繋ぐ手がほどけないように、私はもう一度強く握り締めた。