「お前、本当に一人前になったな、コーヒー、美味しかった」

石堂さんは、今まで見せたこともないような柔らかい笑みを目に浮かべ、そして誇らしげに私を見つめた。

「あ、もしかして……さっきのブレンド……」

先程、怜奈が持ってきた注文を思い出す。確かブレンドコーヒーだけだった。まさか、あの注文が石堂さんのものだったなんて、思いもしなかった。それに、初めて石堂さんは、私の淹れたコーヒーを美味しかったと、そう言ってくれた。

「仕事が早く片付いたんだ。時間があったから、お前のコーヒーでも飲もうと思ってさ、ほら、仕事終わりだろ? 待ってるから」

時計を見ると、もう閉店時間になっていた。

「花岡さん、あとは全部僕の方でやっておくから」

雅人さんがキッチンから顔を出して、そう言ってくれた。